生活習慣病とは
生活習慣病は、数年前までは中高年がよくかかる病気として「成人病」と呼ばれていました。
いろんな症状と疾患が含まれてますが、肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧をはじめ、がん、脳卒中、肝臓病、骨粗しょう病などもはいります。
とくに、肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧の4つの症状はサイレントキラー(沈黙の殺人者)と呼ばれ、自覚症状が出にくいため放置されることが多く、動脈硬化や心疾患、脳卒中の原因にもなります。
日本人の死因トップ3は生活習慣病
今、日本人の一番大きな死因は圧倒的に「生活習慣病」です。
平均寿命は延び続けているものの、がん、心臓病、脳卒中などの病気とつきあいながらの「長生き」である場合も少なくないようです。
日本人の全死亡者のうち約60%が3大生活習慣病で亡くなっています。
年次推移では、がん、心臓病の死亡率が増え、脳卒中、肺炎が減少しています。
生活習慣病の予防
生活習慣病の予防は、食事、運動、休養といったライフスタイルの改善から始まります。
病気を発見してから治すのではなく、日頃から自覚をもって、生活を改 善していくことが重要です。
不調を感じている部分はないか、体型や体重、血圧などに大きな変化はないか、食生活で不足している栄養素はないかといったことを把握し、問題があれば、生活を改善していく。
血糖値やコレステロール値など、自分でチェックできないものについては、定期的に検診を受けること。
さらに 家庭の病歴について把握していくのも必要です。
家族から受け継いだ危険因子に悪い生活習慣病が加わると、発病の可能性が高まるからです。
3大生活習慣病の危険因子
生活習慣病の多くの危険因子となっているものに内臓脂肪とコレステロールがあります。
これらの増加を抑えることが生活習慣病の根本的な予防になります。
例えば、食後の血糖値が高い場合は、内臓脂肪を取ることで血糖値を下げ、糖尿病への進行を防ぐことができます。
内臓脂肪が減れば血圧も下がり、高脂血症も改善されます。
また、コレステロール値が高い場合には、動脈硬化になりやすく、さらに狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などへとつながる危険があります。
また、喫煙は肺ガン、肺気腫など、多くの病気の原因となるので控えましょう。
3大生活習慣病
★糖尿病
血糖値とは
炭水化物を摂取すると、ブドウ糖に分解され十二指腸で吸収され、肝臓を通り血液に送りだされます。
こうしてぶどう糖は全身の臓器や期間に供給され、エネルギー源になります。
血糖というのはこの血液に送りこまれたブドウ糖のことで、濃度が1デシリットルあたり何ミリグラムあるかを測ったのが血糖値なのです。
血糖値を調整するインスリンの働き
食事の後血糖値は上昇します。健康な人だとある程度まで上昇するとそれ以上は上がりません。
この血糖値を調整しているのがインスリンというホルモンです。
インスリンはすい臓から分泌されるホルモンで血液中のブドウ糖が血液から細胞の中へ流れ込むように働き、血糖値が高くなりすぎないよう調整しています。
しかし、このインスリンの働きが阻害されたり分泌量が足りないと、血液中のブドウ糖が増えて血糖値が下がらなくなるのです。
血糖値が高くなる原因
血糖値が高くなるのは、食べすぎや飲みすぎによる内蔵脂肪の蓄積、運動不足、ストレスなどが原因です。
遺伝的な要素もあります。
食べすぎや飲みすぎによって血糖値が急激に上昇し、血糖値を抑えるため大量のインスリンが必要となります。
こうした状態が頻繁に起こるとすい臓が疲労しインスリンがうまく分泌されなくなります。
また、体内に脂肪細胞が多いと、そこからインスリンの働きを抑える阻害物質が分泌されます。
そして、細胞の中へのブドウ糖の流れが阻害され、血糖値を下げることが出来なくなります。
その結果高血糖の状態が慢性的になり、ついには糖尿病の発症へと進展してしまうわけです。
自覚症状はない
糖尿病の怖いところは自覚症状がないまま進行してしまうケースが多いことです。
なんとなくだるいなどと感じ始めたとたん、外出先で倒れて緊急入院し、検査の結果重い糖尿病だったなどというケースがあります。
自覚症状が出たときはかなり重症で、合併症がかなり進んでいる可能性が高いのです。
健康診断で血糖値が高いと言われたら、自覚症状がないからといって放っておくのではなく、きちんと自覚して対策をとることが非常に重要です。
高血糖がある段階を越えて進行すると、さまざまな自覚症状が現れます。
しかし現れ方には個人差がありますし、各症状が糖尿病のどの段階のものなのか判別することも出来ません。
血糖値が高めで糖尿病によくみられる症状がある人は、出来るだけ早く検査を受け、正確に症状を把握し、適切な治療を受けることが不可欠です。
命にかかわる糖尿病の合併症の怖さ
糖尿病が本当に怖いのは、さまざまな合併症を引き起こすことです。
それも失明や足の切断などの深刻な事態を招くばかりか、脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわるものまであります。
脳梗塞や心筋梗塞は糖尿病でない人にも起こりますが、糖尿病があると発症する危険度が高まります。
また、糖尿病の三大合併症と呼ばれる次の三つは、糖尿病患者だけに見られる合併症です。
1)糖尿病神経障害
末梢神経が高血糖で傷害されることで起こる病気です。
糖尿病の発症から3〜5年で起こってくる症状です。
最も多いのは足のしびれで、進行すると痛みや熱さを感じなくなり、足の先に怪我をしても気がつかないまま壊疽(えそ)を起こしてしまうケースがあります。
こうなると症状によっては足の切断手術をしなければならなくなります。
また、自律神経が障害されると、めまいやたちくらみ、発汗異常、便秘、下痢、尿の排泄異常などが起こります。
2)糖尿病網膜症
高血糖の状態が続くと眼球の内側を覆っている網膜の毛細血管が侵され、出血が起こります。
気付かないまま放置しておくと、出血範囲が広がり大幅な視力低下を招きます。
さらに進むと大出血を起こし、失明に至るケースもあります。
毎年3000人を越える人が糖尿病で失明しており、日本人の中途失明原因の第1位になっています。
3)糖尿病腎症
腎臓は血液を濾過し、老廃物を濾過して体外に排出する役割を担っています。
しかし高血糖の状態が続くと、血液のろ過を行う腎臓内の糸球体(しきゅうたい)という組織の毛細血管が傷害されて機能が低下し、腎不全という状態になります。
こうなると老廃物が排泄出来ずに体内にたまり、場合によっては尿毒症という 命に関わる病気を起こしてしまいます。
腎不全が進むと、人工透析を行って、老廃物を除去しなければならなくなります。
新たに透析が必要になる糖尿病腎症の患者は毎年1万人を優に越えるといわれています。
糖尿病予防は生活習慣の改善から
最近腹が出てきたと感じたら、使われないエネルギーが脂肪となって体内に貯蓄されはじめたサインかもしれません。
2008年4月に開始した特定健診では血糖値も測定されるので、自分の血糖値を把握し危険信号を察知する良いきっかけになるでしょう。
ちょっと高いだけだからと安心せず、血糖値を下げる生活習慣を身につけましょう。
特定健診で血糖値が高いと診断されても、急に今までの生活習慣を変えることは簡単ではありません。
すぐに改善しないと命にかかわるようなケースならともかく、糖尿病予備軍、あるいは糖尿病で少し血糖値が高い程度ではそこまで切迫してはいません。
すぐにできることは、今までの生活習慣を振り返って血糖値をあげている要因を見つけ、着実に改善していくことです。
血糖値を上げる習慣は
- 食べすぎ飲みすぎ
- 偏食
- 運動不足
- ストレス
などがあげられます。
規則正しく栄養バランスの取れた食事を摂ることを心がけましょう。
また、適度な運動も取り入れ内臓脂肪をためないようにしましょう。
★高血圧
血圧とは
血圧は血液を循環させる圧力のことです。
人間の生命は、全身にはりめぐらされた血管に血液が流れ、体内の隅々まで新鮮な酸素や栄養が送り届けられることで維持されています。
血液が血管を通って流れていくためには、血液を押し出す力が必要になります。
その血液を押し出す役目を担っているのが心臓です。
心臓は収縮と弛緩を繰り返すことで血液を全身に送り出す、いわばポンプのような役割を果たしています。
この力が「圧」です。圧のおかげで、血液は前に進む推進力が与えられ、血管を流れていきます。
こうして生まれる血液の流れる力、動脈の血管壁を押す力が「血圧」なのです。
高い血圧は動脈硬化を招く
血圧は血液を体内に循環させるために必要な圧力ですが、高ければ高いほど新鮮な血液を力強く全身に送り込むことが出来るというわけではありません。
高い血圧はむしろ健康に良くない影響を与えます。
血圧は基準値内でも、すでに血管壁に強い圧を加えています。
例えば基準血圧の130mm/Hgという数値は、1平方cmあたりの水銀を130mm(13センチ)押し上げる力(圧)を意味します。
これは血液に比重の近い水に換算すると、1700mm(170センチ)もの値になるのです。
血圧が高ければ高いほど血液が強い勢いで流れるので、血管壁に大きな負担をかけることになります。
このような状態が長期に渡れば、血管内膜に損傷を与え、それが原因で血管が硬く、細くなります。こうして動脈硬化が進んでしまうのです。
動脈硬化がさらに深刻な病気を招く
動脈硬化が進むと血管内の血液の流れが悪くなり、さらに血圧が上昇するという悪循環に陥り、やがて脳動脈や心臓の筋肉を損傷します。
その結果深刻な合併症を引き起こすことになります。
1)脳に関する疾患
脳にとって、最も深刻な疾患といえる脳卒中には、脳出血と脳梗塞(のうこうそく)があります。
いずれも脳の動脈硬化が主な原因ですが、脳出血は高血圧が脳の動脈壁に強い圧をかけることで脳動脈がついに耐えられなくなり、破裂して出血することです。
脳内出血とクモ膜下出血の二種類があります。
脳梗塞(のうこうそく)は脳の動脈が詰まってしまうことで発症しますが、これも主な原因は動脈硬化です。
2)心臓に関する疾患
心臓病の中でも、特に深刻なのが狭心症と心筋梗塞です。
どちらも命に関わる疾患で、動脈硬化が原因で発症します。
血管がせまくなって、心筋に一時的な酸欠状態を起こすのが狭心症、血液が詰まって心筋が酸欠で壊死するのが心筋梗塞です。
これらの最大の要因は、コレステロールによる動脈硬化ですが、高血圧も大きな危険因子になっていることは、医学的にも証明されています。
3)腎臓に関する深刻な疾患
腎臓に関しては、腎硬化症(じんこうかしょう) に気をつけなければなりません。
これは高血圧が原因で、腎臓内の細動脈が動脈硬化を起こしてしまう病気です。
腎臓の血管が硬くもろくなるのと同時に、腎臓の表面に小さなぶつぶつが出来て、腎臓そのものが硬く小さくなる病気です。
この状態が長期にわたると、腎臓の動脈硬化が進み、最終的には腎不全を起こしてしまいます。
★高脂血症
高脂血症とは
血液中にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離(ゆうり)脂肪酸の4種類の脂質がふくまれています。
高脂血症はこれらの脂質が増えすぎる病気です。
血液中の脂質が多いので、いわゆる血液どろどろ状態になります。
脂質の中でも特に多すぎると問題なのが、コレステロールとトリグリセリドといわれる中性脂肪です。
中性脂肪はリポたんぱくという状態で存在し、必要に応じて体の各組織に運ばれ、エネルギーとして利用されますが、使われないと皮下脂肪や内臓脂肪となって貯蓄されます。
高脂血症も動脈硬化の原因の一つ
血液中の脂質が多すぎて血液が流れにくくなると、血栓ができます。
これを放置するとコレステロールが血管の壁に蓄積され、血管が狭くなり、動脈硬化を引き起こします。
これをアテローム硬化(糊状動脈硬化じゅくじょうどうみゃくこうか)といいます。
アテローム硬化(糊状動脈硬化じゅくじょうどうみゃくこうか)は、脳や心臓などの太い動脈壁内に過剰なコレステロールが沈着し、糊状のかたまりが出来て血管の中が狭くなった状態で、最悪の場合は、血管が完全に塞がってしまうこともあります。
血管の内側が狭くなると、血液の流れが阻害され、血液が十分に流れなくなって臓器は虚血状態となり、酸素・栄養不足、ひいてはその細胞が死んでしまい、機能を発揮できなくなるのです。
コレステロールが原因となる動脈硬化は、初期には自覚症状や検査異常が現れにくく、気が付いたときにはすでに病状が進行しているケースが多いといいます。
ですので、メタボリックシンドロームの検診や特定健診で、ややコレステロール値が高いといわれただけでも、初期に生活習慣を改善していく必要があるのです。
|